きみを守るために、演じ切ってみせよう。 後編

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 リンジーの言葉に、シャーロットは美しく微笑む。  リンジーとシャーロットは、森の中でひっそりと暮らすことを選んだ。  時々、旅行のように各地を巡り、平和になった国を見て、あのときの判断は間違っていなかったのだと確認していた。危険が近付けばできるだけ遠くへ逃げる。  ふたりだけの世界を何年も、何十年も続けた。それでもリンジーとシャーロットは幸せに暮らしていた。互いしか要らないと思えるほどに、彼らはずっと愛し合っていた。  たまに喧嘩をすることもあったが、いつの間にか仲直りをして、喧嘩よりも笑い合う時間のほうが圧倒的に多かった。  そんな時間を大切に、大切に積み重ね――ふたりはずっと一緒に暮らしていた。最期の瞬間まで、ふたりは幸せに暮らしていた。 ◆◆◆  『シャーロットの悲劇』には。続きがあったことを、国民は知らない。  それが彼と彼女にとって、とても幸せな結末だったことも。  ただただ、『シャーロットの悲劇』は語り継がれていた。  ときには絵本に、ときには劇にと姿を変えながらも、シャーロットの悲劇は民衆に広く継がれていた。  ただ、その悲劇ではあまりにも哀れだと、年々『シャーロットの悲劇』は幸せな結末へと書き換えられていく。  シャーロットとリンジーは、天からその話の流れを眺めていた。 「まさかこんなに後世にまで、語られるようになるとは」 「あの頃には思いませんでしたね」  そんな会話をしながら、彼らはともに過ごしている。  彼らの幸せな時間は、まだまだ続いていくようだ。
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