きみを守るために、演じ切ってみせよう。 前編

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 リンジーがローズマリーに渡したのは――彼女の家族と使用人が遠くに逃げられ、逃げた先で暮らしの基盤を整えられるくらいの金貨。  リンジーはふっと微笑みを浮かべて、こくりとうなずいた。  ――どうか、シャーロットが南の大陸につくまでは、なにも起きませんように。 ◆◆◆  シャーロットがパーティー会場から出ていって、すでに三日が経過している。  恐らく、現在は馬車で南の大陸に向かっているだろう。  シャーロットの家族たちも、彼女と一緒に南の大陸に行くように提案してみたが、公爵はそれを断った。  そして本日、公爵がリンジーのもとに足を運び、こう切り出す。 「――天気の良い日が続きますね」  公爵の言葉に、リンジーはすっと視線を窓に向ける。確かに、晴れの日が続いていた。 「そうですね」  リンジーの執務室で、お茶を飲みながら言葉を()わす。公爵はお茶を一口飲んでから、小さく息吐いて、リンジーを見つめる。 「――恐らく、あと一週間もすれば、シャーロットは南の大陸につくでしょう。リンジー殿下には感謝と同時に、申し訳ないとないと思っております」 「公爵?」 「あの子はなにも知らずに南の大陸で暮らすでしょう。いずれ来る日に、我々のことを恨むかもしれませんが……」 「それでも、彼女が生きてくれることが、俺の望みですから」
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