きみを守るために、演じ切ってみせよう。 前編

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 腐りきったこの国は、もう終焉まで時間がないだろう。  レジスタントがクーデターの準備をしていることを知ったのは、もう何年も前になる。  悪行の数々を犯してきた国王。それに従う貴族。  平民たちの不満は増すばかりの国。  ……人数を集め、武器を集め……まもなく始まるであろうクーデターを思い、リンジーはお茶を飲んだ。 「殿下は、本当にシャーロットを愛してくれていたのですね。親としては嬉しい限りですが……」 「ええ。愛していました。愛しているからこそ、彼女は俺と命運をともにすることはないと判断しました」  リンジーは目元を伏せて微笑む。 「穏やかで優しく、平民たちからも慕われている彼女を追放したことで、国民の不満はさらに高まったでしょう。おそらく、近いうちにクーデターが起きると思います。俺は最期まで、王族としてこの城に残るつもりです」  この事態を招いたのは国王並びに貴族だ。  もちろん、貴族の中でも平民に慕われている人も確かにいた。  公爵家のシャーロットがそうであったように。 (――彼女だけは、生きていてほしい)  幼い頃からリンジーの婚約者として育ったシャーロット。  妃教育を受けながら、慈善活動にも力を入れていた。  あのパーティーの日に、問答無用で南の大陸に向かわせたのは、その大陸は優しい人が多く、暖かく過ごしやすいと耳にしたからだ。  すでにシャーロットの生活基盤は整えている。南の大陸の知り合いに彼女のことを頼んでいたから、きっと幸せに暮らせるだろうと考えて、リンジーはゆっくりと息を吐く。 「シャーロットが生きていてくれること。それだけで、俺は満足です」
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