きみを守るために、演じ切ってみせよう。 前編

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 シャーロットがリンジーのことを恨んでも構わない。  恨まなくても、リンジーのことを忘れて幸せに暮らしても構わない。むしろ、自分のことを忘れて、幸せな日々を過ごしてほしいとリンジーは目を伏せた。 ◆◆◆  ――そして、それから一週間後。  予想通り、クーデターが起こり、平民たちが力を合わせて、王族たちを捕らえた。  リンジーの父親である国王も、母親である王妃も、リンジーの兄弟や親戚までも、ひとり残らず捕られえた。  捕らえられた王族は牢に入れられ、最期のときを待つ。  ひとりずつ狭い牢屋に入れられたからか、父親の憤怒の声、母親の嘆く声、様々な声が聞こえる。  リンジーはただ、最期のときを、待っていた。 (シャーロットは、無事に南の大陸についただろうか?)  牢屋の壁に背をつけて座るリンジーは、ぼんやりとした思考でシャーロットのことを想った。南の大陸にこの話題が届くまで、時間がかるだろう。  ……できれば、シャーロットの耳に届かないでほしいと願うのは、許されないことだろうか。  リンジーがそんなことを考えていると、父親が連れられた。  公開処刑を(おこな)うらしい。それほどまでに、王族に対して憎悪があるということだ。どこで行われているのかはわからないが、父親が処刑されたのか人々の歓声が耳に届く。  いつか、自分もそうなる運命なのだろうと、目を伏せた。
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