きみを守るために、演じ切ってみせよう。 後編

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 リンジーは無言をつらぬいた。ただただ、憎悪で満ち溢れている国民たちの視線を感じ取り、目を伏せる。  刑が執行されるその一歩手前、凛とした声が響いた。 「お待ちください、お願いします……!」  聞き慣れた声が耳に届く。その声が、シャーロットのものだと気付いたとき、リンジーは反射的に顔を上げていた。  民衆をかき分けるように近付いてくる彼女の姿を見た彼は、「近付くな!」と声を上げる。 「なぜです、なぜなのですか、リンジー殿下! どうして私に、ともに死ねと言ってくださらないのですか!?」  リンジーと命運をともにする覚悟だと、シャーロットが口にした。  ならば、ともに逝けばいいと民衆がシャーロットを断頭台へ運ぶ。  南の大陸にいるはずの彼女が、なぜここにいるのか。そしてリンジーと命運をともにしようとするのかがわからず、リンジーはただ彼女を見つめていた。 「――なぜ、戻ってきたんだ。きみは、きみだけは生き延びるべきだったのに!」  声を荒げるリンジーに、シャーロットはゆっくりと首を横に振る。 「いいえ、リンジー殿下。わたくしもこの国と……あなたと命運をともにしたいのです。わたくしはあなたを愛しているから」 「シャーロット……」 「国民たちよ! これで満足か!? お前たちもこの国の王族、貴族たちと変わらない! 自分たちの気持ちを晴らすために公開処刑をするなど、言語道断! 覚えておきなさい! 我ら王族、貴族の死を! 誇り高き死を! その目に焼き付けなさい!!」
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