きみを守るために、演じ切ってみせよう。 後編

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 シャーロットは小瓶を取り出し、リンジーに向けて優しく微笑む。その小瓶の蓋を開け、中身をぐっと飲み干した。 「やめろ、やめてくれ、シャーロット! 死ぬべきなのは俺であって、きみではない!」 「――いつかまた、巡りあいましょう……」  シャーロットが倒れるのと同時に、ギロチンの刃が落とされる。  その瞬間を見ていた人々は、王族や貴族を処刑することでこれまでの()さを晴らしていたことに気付き、叫び出す。  自分たちが、あれほど嫌っていた王族と同じことをしていることを実感し、おかしくなったかのように叫ぶ。  のちに、このクーデターは『シャーロットの悲劇』と名付けられた。 ◆◆◆  ――この国には魔女がいる。  あの『シャーロットの悲劇』と名付けられた令嬢と同じ名前の魔女が。  魔女は国内を転々と歩き、拠点を変え、今日もただ……ひたすらになにかを待っている。  それは『シャーロットの悲劇』から三百年後のある日。  魔女の家を訪れたたったひとりの少年。  シャーロットは彼を見て、目を大きく見開いた。 「――リンジー……?」 「やぁ、シャーロット。ずいぶん、待たせてしまったようだね」  三百年前と容姿は違えども、それは確かに『リンジー』で、シャーロットは彼を見つめる。  この三百年で君主制から共和制と変わり、国は見違えるほど豊かになった。  様々なトラブルもあったが、国民たちが協力し合い、解決していく。  その様子を三百年……シャーロットはずっと見守っていた。
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