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『口が固い事。秘密は必ず守る事。会話の中で、お客様がうっかり内密案件を漏らす事もあるし、こんな所に出入りしているのが知れたら、大事になりかねない。だから、ここで働くのなら、口が固い事は絶対条件。いいね?』
『はい。わかり……まし……た……』
予想以上に制限が多い事に内心驚いていた瑠衣だが、借金を返さなけらばならない事を考えると、妥当なのかもしれない、と思い直す。
そう、瑠衣は南洋ファイナンスの金蔓のような存在となったのだ。
凛華が不意に思い出したように、質問を続けた。
『ああそうだ! 重要な事を聞き忘れた』
両手でパンっと一度叩くと、瑠衣は顔を引き攣らせながら身体を小さくビクリと震わせる。
『何ですか?』
『まさかとは思うけどさ。あんた…………処女じゃないよね?』
『……っ』
瑠衣が一瞬怯んだ表情を浮かべたのを、オーナーは見逃さなかった。
これまでの人生、瑠衣が付き合った事のある人は、音大時代に一人だけだ。
身体の関係を持とうとしたが、互いに初めてだった事もあり、瑠衣がやたら痛がって、結局は未遂で終わった。
黙っていても凛華にバレると思った瑠衣は、処女だという事を正直に話した。
『そういう雰囲気になった事はあるけど…………う〜ん……処女かぁ……』
顔を顰めながら腕を組んだ女主人は、遠くに視線をやりながら思案しているようだ。
何か思いついたのか、困惑しながらも瑠衣に提案する。
『あんたが良ければなんだけど……』
『はい』
『私の知り合いで、女風のオーナーやってるイケメンがいるんだけどさ、その人に初めての相手になってもらえるよう、お願いしてみる?』
『え!?』
(女風……? それって…………女性専用風俗って事……だよね?)
思いもよらなかった凛華の提案に、瑠衣は目を丸くさせながら唖然としていた。
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