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「あと三百万っすね」
茶髪の男がヘラリと笑いながら借用書を取り出し、侑に見せると、彼はヤツからそれを奪い取り、瑠衣の手を繋ぎ、玄関へと向かおうとした。
「おいゴルァ!! 逃げんのかテメェ!!!」
「…………逃げる? 俺は女が危ない目に遭わんように自宅に入れさせるだけだが?」
ツンツン男の怒声にも動じず刺すような視線を送る侑に、茶髪男も身体をビクっと震わせた。
「…………お前らは、いちいち大声を上げなきゃいられんのか? そこで大人しく待ってろ」
侑が瑠衣を家の中に促し、玄関ホールの隅にある椅子に座らせ『お前はここで待ってろ』と言い残してリビングに入っていく。
数分後、スマホと大きく膨らんだ封筒を持った侑が再び玄関に現れ、それが何かを知った瞬間、瑠衣が外に出ようとする彼を引き止めた。
「先生!! それっ……て……」
「…………これでお前の残りの借金を全額返済する。この金は俺にとって…………ある意味『忌々しい金』だ」
そう言うと侑は再び外に出て、南洋ファイナンスの二人の元へ向かった。
(忌々しい……金って……)
瑠衣は封筒に入っていたお金が、なぜ忌々しいのか疑問に思うが、まずは侑が無事に対処してくれる事を祈るしかない。
外からの会話が薄らと瑠衣の耳にも聞こえてくる。
『さて……お前らはどうも信用できんから、まずは先に領収書を切ってもらおうか。金を払うのは、それからだ』
『………………』
『…………何だ? 三百万も払うというのに、領収書も切れないっていうのか?』
侑が冷酷な声音で嫌味を言い、南洋ファイナンスの二人に畳み掛けている様子が続いている。
『…………御社の社名と住所、電話番号、代表取締役の名前が記載されてないな。どういう事だ? それとも御社は架空の金融会社なのか?』
圧の強い侑の話し方のせいか、あの二人は萎縮しているようで、小声でボソボソと彼に対応しているようだった。
『おい、領収書に収入印紙が貼ってないな。ないならそこのコンビニで買って来て、さっさと貼れ。よくそんな杜撰なやり方で商売が成り立っているな』
数分後、ようやくまともな領収書を受け取り、侑は金を渡したようだった。
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