関屋

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 割引シールが貼られたお弁当を二人で食べ終え、由麻ちゃんの服を取りに行きお風呂に入り終わった頃に警察へと通報した。 「関屋あんずさんもご同行願いますか?」  平屋に住む住人が玄関からこっそり見ている視線が伝わる。赤色灯の灯りに何事かと平屋とは別に野次馬まで来る事態。 「関屋さん、あんたなにしたね?」  普段は挨拶しかしない隣のじいさんがやって来て事情を聞こうとする。きっとこういう人がニュース番組でベラベラとあることないことを話して広めるんだろう。 「下がって!!」  じいさんの言葉に返事をしないのが一番だ。あたしと由麻ちゃんは、パトカーではなく覆面パトカーに乗せられた。警察のちょっとした配慮だろう。それが今はありがたかった。パトカーに乗せられたのでは、あたしが手錠をかけられていなくても、悪者扱いされてしまう。 「関屋さん、ごめんなさい」  後部座席でフードを深く被り俯いた由麻ちゃんが謝ってくる。 「おばあさんはお節介なんだよ」  あたしだって怖いんだ。十歳の由麻ちゃんが怖くないはずない。少しでも空気を紛らわすために軽く冗談を言って苦笑を浮かべて見せる。  由麻ちゃんの左手が伸びては縮んでを繰り返している。あたしは大丈夫とばかりに強く握りしめてあげた。この道が厳しい道だってわかっている。由麻ちゃんの産みの親が現れる可能性だって低い。  けど、閑静な平屋で起きた小さな事件は地方ニュースとして取り上げてもらえる。 (どうか、由麻ちゃんの産みの親が見ていてくれますように)  ただそう願っていた。
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