わたしがいるべき場所は

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 ゆっくりと並んで歩きながら、関屋さんが知る事実とわたしが知る事実とを照らし合わせる。 「産みのお母さんが亡くなってたなんてびっくりしたよ」  数日後、警察署に来た育ての親が供述したのは驚くべきこと。 「櫻井(さくらい)姓じゃなくて本当によかったんだね?」  わたしの本当の名前は櫻井美景(みかげ)だった。産みの母である櫻井京香(きょうか)は病弱な体質だったようで、わたしを産んで数時間したら亡くなった。 「うん。いいんだよ」  関屋姓になることに躊躇いもなかった。名前を知っても美景より、由麻がしっくりきたのは事実。 「山田さんたちも巻き込まれていだけなんだね」  育ての親は婚姻関係を結んでおらず、櫻井京香の友人関係だったと明かした。二人とも産みの母の無理なお願いを聞いてあげた優しい人だったことも。  本当なら、育ての親の二人にもお礼を言って会うべきだろう。産みの母がわたしに残した多額のお金を不正なカジノに使っていなければ、あの二人にまた会えていたのに。 *  わたしたちはバスを乗り継ぎ、市内にある教会にたどり着く。妊婦だった母が生前、シスターに頼んでいたこともあの友人の二人が供述した。そして、わたしを引き取ったシスターが山田さんたちにわたしを引き渡した場所。  櫻井京香の眠る場所には、大きな木が風に揺られ葉をサワサワと揺らしていた。 「ただいま、お母さん」  あなたに会いたくて教会裏までやってきた。樹木を触るけれど母は感じられなくて、強い風が吹いただけ。  恨みもしたよ、なんでと何回も人生を問い返したよ。そうしてやっとわたしの人生と向き合えて、大切な人と暮らせる日にわたしは、大切なことを言いに来たの。 「お母さん、わたしを産んでくれてありがとう。これからも見守っていてね」 「櫻井京香さん、由麻ちゃんと出会わせてくれて感謝しています」  二人で目を瞑り手を合わせ冥福を祈る。  サワサワと風が揺れて  来た道を戻ろうとしたとき、お帰りと聞こえた気がした。 おわり
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