一ノ章

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バシッ! バシッ! 「許してください!お兄さ…きゃあああっ!」 「兄など呼ぶな!不愉快だ!!」 兄と呼ばれた青年は榛名を縛り、鞭打ちにした。 神楽家の跡取り息子「神楽冬史郎(かぐらとうしろう)」24歳。 霊力の強い雪愛を贔屓し可愛がってるが、元々は榛名にも優しかったのだが榛名が8歳になり、両親同様に霊力がないとわかると冷酷になった。 雪愛のご機嫌取りや機嫌が悪いと八つ当たりのように榛名に鞭を振るっている。 そして「雪愛の兄」として権力を振りかざしている。 「…血を洗い流さないとな」 榛名に水をぶっかける 「オレを兄と呼んだ罰として3日間飯抜きだ」 冬史郎は榛名の拘束を解き、去って行った。 一人牢屋に取り残された 「……気をつけてたんだけどな」 (もう涙もでないや…) 家族の中では父親は無関心だが、父親以外の母親、雪愛と冬史郎は榛名に対して、特に酷く虐げる。 母親は父親に「忌み子を産むなんて」と嫌味を散々言われ憎しみが榛名に向かった。 雪愛は本来なら長女がアヤカシの番になり、次女以降はどこかの分家に嫁ぐのだが、次女が長女より霊力が強い事は「例外」であることから、島中から讃えられ雪愛は「自分は特別中の特別なんだ」と思い込み、霊力がない忌み子の榛名を奴隷以下の扱いをし虐げた。 榛名が雪愛ほどではなくとも霊力やアヤカシの番になっていれば幸せな家庭で島中から迫害を受けることもなかっただろう。 (雪愛の命令を聞いてご機嫌とってたのに、いきなりビンタされるのは想定外だよ) 自分の腕を見つめた。怪我をしていた傷口が塞がる 榛名には霊力がないにも関わらず自己治癒力のような力があるようで自分の意思に関係なく勝手に治っていく。 榛名以外は知らない力で榛名自身も何故かわからない。 榛名はこの力をよく思っていない…いや、大嫌いだった。 (早く消えたいのに…)
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