一ノ章

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「早く運びな、のろま!忌み子はほんと出来損ないの役立たずだね!」 「…はい。申し訳ございません。」 冬史郎から飯抜きと言われてから2日後、榛名は重い荷物を1人で何往復もさせられていた。 正月を迎えるための準備だ。 榛名は神楽家だけではなく他の分家の手伝いに駆り出されていた。 食事も就寝時間も削られフラフラしていた。 休んだり口ごたえすれば罰として鞭打ちをされるので従い働き続けなければいけない。 たとえ島の住民達から歩く度に心ない言葉を浴びせられたとしても。 榛名は重労働の末、いつの間にか気を失ってしまった。 (ん…冷たい) 目を覚ますと手足を拘束し逃げないように木に縛りつけられていた。 おそらく働かず気を失った罰だろう。 「くしゅん!」 ブルッと震え、足元を見ると雪が振っていた。 「嘘でしょ…」 朝まで誰も榛名を助けないし誰もこない。このまま雪が積もった時の最悪を考えた。 「もし?」 絶望の中、可愛らしい声が響いた。 振り向くと声の主は「神代光希(かみしろみつき)」。 東丿島の主である本家「神代」の長女である。 神代家は大昔、アヤカシが暴れていた頃に当時の神子が霊力が最も強い4人の女性を神子の継ぐ子を、神は自身の眷属である神の獣をそれぞれの島に置いた。 神子と神の獣は婚姻関係を結び、その子孫が神代家である。 神代家は代々、神の獣である【龍神】を祀り守る一族だ。 光希は14歳の少女でおっとりしているお嬢様だ。 最近、妖狐のアヤカシの番になった。 時々アヤカシから会いにきて良好な関係を築いているのだとか。 「光希様…」 「熱いお茶とおにぎりをお持ちしました」 「うぅ…ありがとうございます」 縛られているので光希が榛名の口に運んでくれた。 「私が縄を解けば貴方はまた酷い仕打ちを受けるでしょう…何もできず申し訳ございませんわ」 「いいえ、充分していただいてます。本当にありがとうございます。」 光希は島中から迫害されている榛名に心を痛め、助けようと父親である神代家の当主に頼んだが聞き入れてもらえず、時々コッソリ助けてくれた。 榛名は光希に感謝しかなかった。 「カイロを懐に入れておきますね。気づかれないように後で捨ててください」 そう言って見つからないように榛名から離れて行った カイロ暖かいな…光希様の御心が一番暖かい…) 雪の中、一晩外で過ごした。
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