一ノ章

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「ん…んっ!」 榛名は違和感に気づき、重い瞼をゆっくりと開けた。 目の前には男がおり、榛名にキスをしていた。 男は榛名が目を覚ましたことに気づき、更に激しく唇を重ねあわせた。 「んん!…ふぁっ!」 やっと開放される 『やはりな……お前は……』 「誰ですか?私…龍神の生贄になったんじゃ…?」 『俺がその龍神だ。青龍とも呼ばれているがな。どっちでも構わん』 「えっ!」 龍神と名のる男は青みがかった黒髪で漆黒の瞳、瞳と同じ漆黒の和装と洋装を混ぜたような変わった服装をした超絶美形だった。 『神の眷属なのだから人の姿になれる。聞いたことないか?東丿島に龍神と神子が婚姻関係を結び、子孫を残してやったろ?神子は人間だからな』 生贄として拘束された時に雪愛が言っていたことだ 「私は食べられるのですか?」 『お前が望むならな』 「望まなかったら?」 『俺は痩せて死にそうな小娘を食べる趣味はない。よって海に投げ捨てるかもな』 「……」 (私は生贄にすらなれないんだ…なんで生きてるのかな……) 下を向き唇を噛む榛名。 そんな榛名を龍神が強い眼差しで見つめ、何か考えていた。 『お前に選択肢を2つ与えてやろう』 榛名は顔を上げ、龍神をみた 『1つは東丿島に戻ること。今までと平和な生活に戻るだけだ。生贄に出されて泣いてる家族も喜ぶだろう』 (平和な生活……家族…………) 『2つ目は俺が飽きるまで毎晩抱かれ、飽きたら食われる生贄になること。生贄として俺様の気分で生死が決まる』 (………) 「質問1つだけいいですか?」 『ああ、認める』 「龍神様は私に酷い仕打ちをなさいますか?」 龍神は一瞬、驚いたが生贄として縛らていた榛名の傷をみていて納得もした。 『俺は女にそんな事は絶対しない』 「…私は龍神様の生贄として尽くします」 『フッ…ならば契約として俺に接吻…今の人間の世界でキスとか言うんだったな?誓いのキスをして忠誠を示せ』 「え………はい」 フラフラと歩き、龍神の前に立つと軽くキスをする。 キスに慣れなれない榛名は緊張していた。 『女、名を名乗れ』 「は、榛名です」 『俺は十六夜(いざよい)だ』 「十六夜様……」 十六夜は榛名を抱きしめ激しいキスをする。 榛名は戸惑い恐れをなしながら受け入れた。 一度死を覚悟したのに情けないと思う。でも少しでも生きられるチャンスがあるなら、と生にしがみついた。 榛名は十六夜の生贄生活が始まった。
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