五ノ章

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怒りを募らせている妖狐の当主と違い、天狗の当主は機嫌が大変良い。 息子の(よく)から神子の話しを聞き、しかも神通力が相当強い事と治癒の力があると知り歓喜した。 アヤカシは神も神獣、神子のことは知っているが 神獣たちは初代神子を除き数百年の間、誰一人としてして神子を迎えていなかった。 神通力がある者はいただろうが、神通力を持っても神獣から神子に認定されていない。 龍神の神子…つまり榛名には利用価値がある。 神通力を持つ者は貴重であり、強いなら尚更、希少価値がある。 一族にとって絶対的な権力を保持できるほどの王冠や勲章のような存在。 過去に神通力の持つ者がいてもアヤカシが気づかないほど弱いなら意味がない。 そして榛名を実験動物として苦痛でも強いれば、治癒の力の源を解明し永遠の命が手に入れるかもしれない。 天狗の当主は昔から永遠の命を欲したが叶わなかった。 「妖狐なんぞに構ってられん。西ノ島では白虎を怒らせ失敗したそうだが、青龍の神子を奪うのだから慎重にいかねば…」 天狗の当主はある場所にやってきた。 「アヤカシの女は貴重だが、お前の価値は無くなったよ。お前には近々消えてもらうぞ…音羽」 それだけ伝え、去った。 音羽(おとは)と呼ばれた女性のアヤカシは無言で天狗の当主をギロッと睨みつけていた。
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