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一章
『でね〜ブランドの新作バッグが可愛いの〜だ•か•ら買いたいな〜って。ね?お姉ちゃん』
(…またはじまった)
『ちょっとぉ〜聞いてんの!』
「無理よ。知ってるでしょ?」
『はぁぁ〜だったら副業でもして働けよ無能!』
「副業禁止なのよ。夏姫もアルバイトしたら?」
『は?口答えとか何様だよ。可愛い私は働くわけないでしょ…………お母さん〜またお姉ちゃんが意地悪してくるよぉ〜』
少しの沈黙のあと母親が代わる
『ちょっと無能!夏姫ちゃんを毎回毎回虐めて楽しんでるんでしょ!ほんとに…』
ガチャ
電話を切った。
伊澄澪(いずみ・みお)は手が震えていた。
幼少期、3つ離れた妹、伊澄夏姫(いずみ・なつき)は見た目が可愛く愛嬌があったため両親は姉である澪と妹の夏姫を比べ、妹の夏姫だけを可愛がられた為、我儘で傲慢な性格に育った。
澪には無関心で両親や両親を見て育った夏姫からは「無能」「無価値」などと言われ続け虐げていた。
澪はずっと寂しい思いをしていた。
高校を卒業後、大学にも行かせてもらえず就職する事となった。
就職してからアパートの家賃、光熱費、生活費以外は強制的に仕送りさせらている。
かなりギリギリに切り詰めた生活をしている。
夏姫はそれを知りながら澪に嫌がらせをしているのだ。最近は電話を切ってなんとか切り抜けているが時間稼ぎに過ぎない。
「どうしょ〜…また…」
過去の事を思いだし会社の階段に座りこんだ。
「おやおや、お一人ですかな?」
「あ 吉田さん」
吉田さんはうちの部署の癒し枠で、もうすぐ定年退職を迎えるお爺ちゃんだ。
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