一章

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「またご家族から無理難題を押し付けられているのかい?」 吉田さんはお菓子の包みを澪に渡す。 「これ食べて元気だしな」 「ありがとうございます!」 吉田さんは少し前に澪がひっそりと泣いていた時に声をかけてくれ、我慢できずに愚痴を吐いてしまったことがある。 その時から心配して話を聞いてくれたりお菓子をくれたりとお世話になっている。 澪が勤めている会社は副業禁止で給料はよくない部分を除けば、環境も良く居心地の良い会社だ。 澪はそんな会社が好きだった。 何より吉田さんという癒しがいるのだから。 「もう吉田さんと結婚したいです〜」 「ハハハッ。ワタシには妻がいるからすまないね。でも若い子にそう言って貰えて嬉しいよ、ありがとう」 笑いながら冗談だと思っているようだが、澪は少し本気だった。それほど愛情と安心感に飢えていた。 吉田さんは何かを考えてから澪に告げる 「澪ちゃんって恋人はいるかい?」 「…?……は、恥ずかしながらいません」 「そうか!よかった」 「??」 澪はなぜそんな事を聞くのか疑問だった。 「実はね、ワタシの旧友が孫のお見合い相手を探してると相談してきたんだよ。どうかな?」 「はぁ…お見合いとか結婚なんて早いです」 「旧友の会社は有名な大手企業なんだが、お孫さんは若くして出世しそこの重役だそうだよ。すぐ結婚するわけじゃないしお見合いしてみないかい?」 「年も近いし…その、結婚すれば澪ちゃんの生活や心が裕福にもなるんじゃないかな?もちろん結婚が全てじゃないと思うけど」 「あ…はい。お見合いの件、お受けします」 「そうかい!ありがとう!旧友に連絡してお見合いの日取りとお孫さんの写真貰ってくるよ」 そう言って吉田さんは先に部署に戻っていった。 吉田さんは澪の事情を知っているからこそ薦めてくれたのかもしれない。吉田さんの有り難い気持ちを無下にできない。 「お見合いか…っと昼休憩終わるし戻らなきゃ」
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