三章

2/14
前へ
/81ページ
次へ
ある時、普段は別邸に住み、ここ数年の長期入院をしていたお祖母様がお祖父様と一緒に本家で退院祝いをすることとなった。 祖父母は俺が産まれた時に一度会っているそうだが、覚えていない。弟は祖父母に初めて会う。 弟と挨拶に行くとお祖母様が突然叫び、俺と弟の服を(めく)る 捲られた肌に無数の傷があった。 あの女に虐待された傷だ。 お祖母様は俺と弟を交互に抱きしめて 『もっと早く会ってれば…ごめんね、ごめんね』と泣いてくれた。 お祖母様は何も悪くないのに。 誰にも言えなかった事に気づいてくれた… ただそれだけで救われた気がして涙した。 その後は俺と弟は療養を兼ねて祖父母の住む別邸に行った。 父はあの女と離婚し遠い地へ送ったそうだ。 何でも許していた父もさすがに許せなかったらしい。そして俺達に謝罪し仕事の合間に来て食事会などをした。 お祖母様は素朴な方で昔は一般家庭の長女として大家族を支えていたらしい。祖父が大事な物を無くした所に祖母も一緒に探してくれたことがキッカケで祖父と結婚した。 とても仲が良く惚気話しや恋人繋ぎで歩いたり、孫の俺達の前でもキスしていて目のやり場に困った。 『お祖母様、僕もお二人のような素敵な方と出会い幸せな家庭を築けますか?』 祖母は聖臣の頭を撫でながら 『聖臣はたくさん辛い思いをしてきたのですから、神様がきっと聖臣に素敵な方と巡り合わせてくださいますよ。もちろんあの子にもね』 祖母は祖父と遊んでいる弟をみる 『はいっ!』 そしてその翌日の朝、お祖母様は眠るように亡くなった
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加