三章

3/14
前へ
/81ページ
次へ
お祖母様が亡くなったあと、祖父が心配だったが話し合いの末、本家に住むこととなった。 16歳になると一族が決めた婚約者ができた。政略結婚というやつだ。 婚約者は百目鬼家ほどではないが、それなりの財閥の娘だ。 綺麗に身を包み、上品だったが社交辞令ばかりの胡散臭いつまらん女だった。 こちらから婚約者を破棄してやった、それから新しい婚約者が現れると全て破棄してやった。 一族の連中はいい顔をしなかったがしらん。 弟は年頃になると女遊びをはじめた。 母親の愛も知らない、祖父母の愛もお祖母様が亡くなるまでの数年と短い期間だった。 アイツなりに寂しい思いがあるんだろうから止めなかった。 社交パーティーに行けば、砂糖に群がる蟻のように女共が俺と弟を囲む。 俺達の容姿目当てやあの女と同じ百目鬼家の金や権力に目が眩んだ奴らばかりでウンザリだ。 俺は「金剛田権造」と適当に名前をつけ容姿と女が嫌がる女好き、ギャンブル狂など設定を作り、吐き気がしそうな加齢臭の香水をつけ、女を避けた。 数年もすると誰も近寄らなくなり、結婚願望者もいなくなった。 プライベートや仕事でも徹底的に女を避けた。 今まで何も言わなかった父がそろそろ世継ぎをと言い出した。
/81ページ

最初のコメントを投稿しよう!

103人が本棚に入れています
本棚に追加