最終章

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最近の澪と聖臣のぎこちない様子を和彦が冷静にみていた。 「兄貴、マジで感じ悪いな。まっ、それだけ焦ってるんだろうけど…だったら早くコクっちまえばいいのに」 無視を続けていた、聖臣から澪に話しかけた。 「おい。明日から急遽、実家の本家に数日間帰省することになったからお前も着いてこい」 「はい!」 聖臣の不機嫌は相変わらずだが、澪は久しぶりに話してくれて嬉しかった。 ✱翌朝✱ 聖臣と澪は普段の出社と同じ時間に自宅から実家でもある百目鬼家の本邸へ。 和彦は仕事のため、後から合流することとなった。 「澪ちゃん、何かあったら迷わず、すぐ君の王子様であるオレに連絡するんだよ。仕事放棄して駆けつけるから」 冗談交じりの和彦の言葉に澪は初めての本家へ行く緊張が(ほぐ)れた 普段は食材の買い出しなどは私服なのだが今回はメイドとして聖臣に付いていくため、メイド服のままだ。 本家なのでロングスカートを選んだ。 同じ車に乗るように言われるが聖臣は終始無言だった。 百目鬼家の本家に到着した。 あまりの広さに開いた口が塞がらない。ドーム何個分?もしかして某夢の国レベルの敷地だろうかと。 大勢の使用人が聖臣を出迎え、一斉に頭を下げる。 一緒に室内の敷地に入ろうとした澪に聖臣が止める。 使用人が持って来たものを渡される。 渡されたのは軍手とビニール袋に入ったゴミ袋(50枚入)。 「俺の専属メイドとしての抜き打ちテストだ。敷地の草むしりをやれ。夕暮れまでにゴミ袋を全て使いきれ。ズルは許さないからな」 (え…) 「もしズルやゴミ袋が余ったら…」 聖臣は澪に冷たい眼差しを向け 「お前を道具として強制的に俺の子を産ませ、すぐに捨ててやる」 「な、なにを言って…きゃあ!」 困惑した澪は聖臣の腕に触れたが振り払った。 「メイドごときが触れるな。俺に触れていいのは子作りの時だけだ」 「……はい。申し訳ございません」 そして聖臣は敷地内へ消えていった。 澪は使用人に作業場へ案内されたが 呆然と立ち尽くし、泣いていた。 (聖臣様…どうして……)
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