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友笑は有村くんにしがみついて、泣き続ける。
「嫌ぁ!!
修さん! 助けてぇ!! 」
その拒絶の声から逃げるように、わたしたち夫婦は帰りの飛行機に乗った。
窓から、百万山が見えた。
病院以来、妻とはまともに口を利けなかった。
このままではダメだとは思うが、私自身、自分の精神がおかしくなっていないと、言いきれない。
H・Kくんのインタビューをはじめて読んだのは、その席だ。
新聞が読めるから、ひどく狂っているとは思えない。
思いたくないが。
百万山に関する歴史コラムを見つけた。
実は、百万山と言う山があるわけではないらしい。
今、飛行機の窓の向こうで遠ざかる山並み。
その中でも特に標高の高い、3つの峰を総称して百万山と言うのだそうだ。
本当に壮観で広大な山だ。
今も峰が、雪で白くおおわれている。
コラムを読み進める。
3つの峰が、4つに見えることがある。
その4つ目の峰は、遠くハテノ市からやって来た、龍の女神さまなのだそうだ。
百万山で困ったことがあると、助けにきてくれる。
その女神は赤い毛でおおわれ、白い翼を持つ。
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