緑白山滴サンカイザー

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 おもわず、窓にへばりつく。  となりでシートベルトをはずす音がした。  私のものではない叫び声と、激しい足音、何かが倒れる音がした。  妻が、席を立って逃げていく。  不思議なことに、他の客は慌てたようすさえなかった。  私たちは亜鶴クリニックに戻った。  仕事は順調だ。  妻も、しっかりやっていると思う。  だが、心は凍てついたままだ。 「友笑とは、話し合えていないままね」  そうだな。  あの店のSNSを見ると、元気そうだがな。  あのケンカした日から、ずっと考えてきたことがある。 「何なの? 」  あの山で見たことだ。  君だって、信じられないだろ?  サンカイザー。  それを疑いもせずやって来た自衛隊のヘリコプター。  そして、数日分の時間、数十キロメートルもの距離を消したかのような、私たちの下山ルート。  飛行機から見た、百万山の頂上の何か。 「それは、そうだけど」  本当にそれがあったのか確かめるためには、私たち自身がもう一度あのルートを旅するしかないんじゃないかと思うんだ。 「そんな!  危険よ! 」  そう、確かに危険だ。  でもあの山には何かがある。  ほら。
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