唐突

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    そう…それは唐突だった。     『全校生徒は速やかに体育館に集合して下さい。』     みんな急に掛かった全校放送にあっけを取られながら、ぞろぞろと体育館へと移動していく。うちの学校は全校生徒自体がそれほど一般の普通科の高校より少なく、今年は300人がいるかいないかという人数だった。     「おい、田中。」     そう、自分の名前は田中…田中祐樹。この高校3年で作物や野菜について学んでいたんだ。で、呼んだ男は高津裕二。細身のわりに柔道3段のつわものである。その高津に自分は答えた。     「なんだよ。」     「急にいったいなんなのかね?」     「俺に聞くな…知るわけねぇだろ。」     「しけてんなぁ…。まだアレを引きずってんのか?」     自分はその言葉に腹が立って壁に一発拳を叩き付け、高津を威嚇する。高津の性格はいつもは穏和なのでその程度の威嚇でも十分びびったりする。柔道の授業となると鬼のようになるのは学年内では周知の事実として知れ渡っている。     「なぁ、別府さん。どう思うよ。」     「田中君…河田先輩に振られた事をまだ気にしてるの?」     高津が話を振った女子は別府のりこ。彼女はこの学校に来てから何かと話の通じる人で会話していて楽しい人でもある。    
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