9人が本棚に入れています
本棚に追加
香澄の最もな意見に全員、階段に向かおうとしたが。
「うわっ?!」
山村が足元に開いてあった書物を蹴っちまって、書物がよりにもよって、風圧で最後のページを開く。
「ちょっと待ったあー…」
ちょっと待ったコールも虚しく、俺達はこの時代に別れも惜しめねーまま、唐突に今の衣装で現世に跳ばされた。
「何?あの子たち。何かの仮装?」
「この辺にイベントなんて、やっていたか?」
気付くと俺達は街角に、江戸時代での格好のまま立たされていた。
元の時代に戻れたは良いが、よりにもよって、こんな所で、この格好…。
俺達は当然のごとく、注目を浴びている。
「嫌だわ…恥ずかしい…」
香澄は両手で自分の顔を覆い隠した。
「山村、あんたなあ!」
俺は山村の首根っこをつまみあげた。
「わ、わざとじゃないよう!」
「そうです!千夜くん、今は一刻も早く、この場を去りましょう!」
鈴木の言葉に周りを見ると、皆一様にスマホで俺達を撮影している。
ある意味、斬られるより屈辱感があるな。
「逃げるぞ!」
俺は香澄の腕を掴むと、鈴木と山村と共に、逃げ出した。
そして、この奇妙な体験をして、数ヶ月が経った。
俺達の記憶から、江戸時代でのことが薄れ始めた頃。
学園で俺と香澄、鈴木は歴史の教師に呼び出しを喰らった。
最初のコメントを投稿しよう!