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字を教わって、元の時代に戻れる手掛かりが解ると良いんだが、そんな書物なんざあんのか?
だが、解らねーよりは、解った方が良いだろう。
鈴木も「宜しくお願いします」と言って、頭を下げた。
「僕は江戸の町を散策したいなぁ!せっかく来たんだもん!」
山村は山村で、呑気な事を言っている。
「なら、後で銭を幾らか渡そう。せっかく散策するなら、何か買えた方が良いだろう」
「あのー…」
その時、香澄が遠慮がちに言った。
「ご迷惑でなければ、私に奥さんの看病をさせてもらえませんか?」
その場に居る全員が、その言葉には驚かされた。
「香澄。そんな事して病気が移ったら、どうするんだ?」
俺は香澄まで病気になっちまうんじゃねーかってそれが気掛かりだった。
「その時はその時よ。私達、このお爺さんが居なかったら、今頃、生きていなかったかもしれないのよ?」
「そりゃあそうかもしれねーが…!」
香澄が病気で苦しむことは、俺には耐えきれなかった。
「そんな顔しないで?私は恩返しがしたいの。命を助けてもらったんですもの」
「香澄…」
「気に入った!」
爺さんの声が部屋中に響いた。
「そなたの清らかな心、まさしく天女の如し!私の目に狂いは無かった!良かろう。妻の力になってくれ!」
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