江戸での暮らしと不穏な影

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そっか…。 ここは、帰ってから鈴木くんに良い方法を訊いた方が良いかもしれない。 僕はお茶に口を付けた。 「熱い!」 フーフーするのを忘れたから、お茶を思わずこぼしちゃった。 「大丈夫ですか?!これで拭いてください!」 茜ちゃんが布を差し出してくれる。 「ありがとー、茜ちゃん」 僕は舌を出しながら、布を受け取ると、着物に掛かったお茶を拭いた。 「あらあら、熱いから気を付けてね。坊や」 お店の人は、そう言うと、次に来たお客さんの対応に追われてる。 「茜ちゃんは、いつもこの辺でお花を売っているのー?」 お団子を頬張りながら、僕は訊いた。 茜ちゃんと会うのを、これっきりにしたくない。 何で、そう思ったのか、この時は分からなかったけど。 茜ちゃんはコクンと頷いた。 「はい。…山村さんは、この辺じゃ見ない顔ですね」 「うん!僕、友達とここへ来たばかりなんだー。だから、お薬屋さんの場所も分かんなくて」 「だったら、後ほどご案内します。住所変更はお済みですか?」 「んー?よく分かんないけど、まだだと思うー」 「でしたら、そのお友達と一緒に役所に来て下さい。場所が分からなければ、ここで待ち合わせしましょう?」 「案内してくれるの?!」 「は、はい。奥には入れなくても、仕事風景は見れると思いますよ?父の職場の方達とは私も顔馴染みですし」
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