江戸での暮らしと不穏な影

8/10
前へ
/39ページ
次へ
特に病気ってひと言でいっても色々な不調があるからなぁ。 僕がお薬を眺めていると、奥からお店の人が出て来た。 「いらっしゃい。どこが具合悪いのかな?」 お店の人に訊かれて、僕はお爺さんの奥さんが苦しそうに咳をしてたのを思い出した。 「あの、咳に効くお薬って在りますか?」 「在るけど…」 お店の人は、怪訝そうに僕を見ている。 僕が咳をしていないから、不思議に思ったのかもしれない。 「あ、僕のじゃないんです。お世話になっている人の大切な人が、苦しそうに咳していたから…」 「だったら、一応、お薬は処方するけど、一度、町医者に診てもらった方が良いね。行くのが辛いなら、往診に来てもらうとかね」 僕が返事をすると、お店の人は咳に効くお薬を処方してくれた。 「ありがとー、おじさん」 「お、おじ…っ?!ゴホン!お大事になさってくださいね」 僕はお店の人からお薬を貰うと、旅籠に帰る事にした。 もうじき夕餉の時間だ。 食べている時に、お爺さんに町医者の事を言ってみようと僕は思った。 あのお爺さんの事だから、もう診せているかもしれないけど…。 【香澄の奥方看病】 時間は、日中に遡る。 私は居室に案内してもらった後、買う筈だった本の中から物語風になっている物を見繕って、奥様の居室に向かった。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加