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「ええ。花そのものの意味よりも、お花をくれようとしてくれる気持ちが嬉しいもの」
「ごめんなさい!お婆さん。僕の好きな色だったから、きっと喜んでくれると思って!」
「ええ。喜んでいるわ。…香澄さん。悪いけど、花をいけてくれない?」
「…解りました。じゃあ、山村先輩。花、預かるわね?」
「う、うん…」
香澄ちゃんは、僕からお花を受け取ると、部屋を一旦、後にした。
お婆さんと2人きりになった部屋で、僕は枕元まで行って座ると、お薬を出しながら訊く。
「お婆さん。僕、お薬屋さんに言われたんだ。一度、町医者に診てもらった方が良いんじゃないかって…」
「医者になら、もう何度も診せている」
後ろからお爺さんの声がして、振り返ると、お爺さんが部屋に入ってくるところだった。
「お雪、具合はどうだ?」
「具合というか…今日は楽しく過ごせました」
「それは良かった。医者の件だが、私の友人に御殿医がいる。彼に診てもらうのは、どうだろう?」
ゴテンイって何だろう??
「そんな、恐れ多いです!お殿様と私じゃ、天と地の差が有りますわ」
「そうか…お前がそう言うのに、無理強いは出来んな…」
お爺さんは悲しそうな顔をしている。
「貴方…私は自分の身体の事はもう解ります。残り短い人生をここで静かに終えとうございます…」
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