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お婆さんは、悲しい事を言うと、儚く微笑んだ。
その笑顔は、お婆さんが今にも消えてしまいそうで…僕まで悲しくなった。
「お雪…力になれずに済まん…」
「そんな謝らないで下さい。貴方と添い遂げる事が出来そうで、私は幸せなんですから」
「お雪…!」
お爺さんは、お布団の上からお婆さんを抱きしめると、おいおい泣いた。
僕も悲しくて悲しくて、「うわーん!」と声を上げて泣いた。
香澄ちゃんが部屋の前で、花をいけたのを持ちながら、静かに涙を流していたのには気付かなかった。
【千夜くんの剣術道場】
「ここか…」
俺は剣術指南をしてくれるっつー男が泊まっている部屋の前にいた。
案内した爺さんは爺さんで、部屋の場所だけ教えると、早々に去って行った。
まあ、色々、忙しいんだろ。
俺は木刀を握り締めると、襖を開けた。
「頼もう!」
と、部屋の中が見えた途端に、男が鞘に収まった剣を突き出してくるのが見えた。
危ねぇ!
俺は咄嗟に横にズレて、やり過ごす。
「ふむ…動体視力と反射神経は、まずまずだな。良いぞ、入ってくるがいい」
先ずは第一関門突破ってか?
まさかもう稽古じみた事が始まっているとは、思いも寄らなかったが。
「失礼する」
俺は部屋の中に、今度こそ入ると、男が手で示した座布団の上に座った。
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