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「お主だな、剣術を教えてもらいたいというのは。名は何という?」
「千夜…千夜保だ」
「近頃、この旅籠が狙われている事は宿主から聞いておるな?」
「ああ。何なら早速、始めたい」
「良かろう。この部屋の庭で良いだろう。先ずは打ち込んでくると良い」
男が立ち上がったのに続いて、俺も立ち上がると、2人で草履を履いて庭先に出た。
…何か着物といい、履き物といい、慣れねーと、動きづらいな。
だが、そんな事を気にしている場合じゃねー。
俺は木刀を両手で持つと、ブンブン振り回すように男に迫った。
だが…。
「…変わった太刀筋だな。しかし、間合いに入り過ぎているぞ」
男の声が聞こえたと思った次の瞬間には、俺は鞘に収まった剣の一撃を受けて、地面に倒れ込んだ。
今まで素手での稽古は受けていたが、それに慣れると攻撃の間合いがどうしても相手に近くなり過ぎる。
剣術での間合いの取り方から教わる必要が有りそうだ。
「飲み込みが早いな。だが、上段に振り上げ過ぎだ。足元を救われるぞ。…こんな風にな」
何度目か打ち合えるようにはなったが、未だに男には一度も俺の攻撃は当たっていねー。
そうこうしてる間に、男の剣が俺の足にヒットした。
鞘に収まっているとはいえ、イテーもんはイテー。
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