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「ってー…まだまだ!」
俺が間合いを取って、木刀を構え直した時だった。
「そこまで!覇王殿、この子の太刀筋はいかがかな?」
爺さんの声が割り込んで、俺も、覇王(はおう)と呼ばれた男も、動きが止まった。
「なかなか素質がある子です。もう少し鍛練を積めば、直ぐに名の有る武士になれるでしょう」
いや、武士にはならなくても、この旅籠が守れるだけの剣術を身に付けられれば良いのだが。
だが、気付くと空は夕暮れ。
俺の全身は、覇王師匠によって攻撃された打撲の後で、あちこち悲鳴をあげていた。
「保ー、怪我に効くお薬、持ってきたよう」
いつの間にか、山村も帰ってきてたのか。
心なしか、いつもの喧しさ…いや、元気がないようだが。
「ああ、サンキュー」
爺さんと師匠「さんきゅー??」
ああ、やべーやべー。
ここが江戸時代だって、すっかり忘れてたぜ。
「あ、ああ。悪いな。湿布薬はあるか?」
俺は師匠に一礼した後、縁側に腰掛けた。
これでも師匠は本気じゃねーんだろうから、上には上が居るよな。
「うん。在ると思うよー。お爺さん、香澄ちゃんにしてもらって良い?僕じゃ上手く貼れないよう」
「あの天女の子のことだな?…入ってきなさい」
爺さんが襖の方に声を掛けると、香澄が「失礼します」と遠慮がちに入ってきた。
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