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後ろから聞こえてきた声に、俺達が振り返ると、よく時代劇で観るような侍達が刀を抜いて、俺達にジリジリ近付いていた。
俺は香澄を後ろに庇うと、咄嗟に鈴木に言った。
「鈴木!本の束を寄越せ!」
ところが鈴木は、本の命運を知ったようで、なかなか本の束を俺に寄越さねー。
「し、しかし、これは、他の書店では売っていなかった貴重な物で…っ」
本の束を投げて、その隙に逃げ出そうと思ったのだが、鈴木が躊躇っている間に、俺達は侍達に囲まれちまった。
「何奴と訊いている。言わぬと刀のサビにするぞ!」
俺の正面で刀を構える侍が凄んだ。
「に、逃げられないよう…」
「千夜くん!」
山村と香澄もビビっている。
俺は咄嗟に虚勢を張った。
「俺は武士だ!」
刀も何も持ってなかったが、口からそんな言葉が出た。
案の定、侍達は眉をしかめる。
「武士だと?武士なら、何故、刀を持たぬ?そんな格好で嘘をついても、誰も信じんぞ!」
侍の1人が、俺に向かって刀を振り上げた。
よけたら、後ろの香澄が斬られる。
万事休す。
俺は斬られると思いながら、陽の光を浴びて光る刀の刀身を見上げた。
その時。
「お前達!相手は、皆、まだ子供だ!無理に斬るような事はするな!」
侍の背後から、そんな声が聞こえてきた。
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