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着替えを持たされた俺達が、ある部屋の前を通り過ぎた時だった。
「コホッ!コホッ!」
と、苦しそうな咳が聞こえてきた。
「ここの人、病気なのかなぁ?」
腹減った事は忘れたのか、山村が心配そうに、誰ともなしに訊いた。
先頭を歩く丁稚が応える。
「旦那様の奥方です。もう何年も病に伏せっていらっしゃいます」
あの爺さんの奥さんか。
何とかしてやりてーが、医師を目指している鈴木なら、どうにか出来んじゃねーか?
俺は、その事を鈴木に訊いたが…。
「あいにく、この時代は西洋医学が発達してません。東洋医学でいえば、高麗人参が効果的と言われてますが、値段が高いのが難点です」
「可哀想…」
香澄は、自分のことのように心を痛めているようだ。
「だけどよ、あの爺さんなら買えそうじゃねーか」
「そうですね。その辺りのことを踏み込んで訊いて良いものか…」
「旦那様は、貴方方のような旅の者を施すのに、お金を使ってしまうのです。今までも何度か高麗人参は試してみましたが一向に回復しません」
「何か良い方法が有れば良いのにね」
皆でそう言いながら、部屋の前を通り過ぎ、香澄と俺達野郎3人は、それぞれ別の部屋で着替えを済ませた。
と、部屋を出たところで丁稚に木刀を渡される。
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