運命の扉〜いざ江戸へ!

7/10
前へ
/39ページ
次へ
着替えを持たされた俺達が、ある部屋の前を通り過ぎた時だった。 「コホッ!コホッ!」 と、苦しそうな咳が聞こえてきた。 「ここの人、病気なのかなぁ?」 腹減った事は忘れたのか、山村が心配そうに、誰ともなしに訊いた。 先頭を歩く丁稚が応える。 「旦那様の奥方です。もう何年も病に伏せっていらっしゃいます」 あの爺さんの奥さんか。 何とかしてやりてーが、医師を目指している鈴木なら、どうにか出来んじゃねーか? 俺は、その事を鈴木に訊いたが…。 「あいにく、この時代は西洋医学が発達してません。東洋医学でいえば、高麗人参が効果的と言われてますが、値段が高いのが難点です」 「可哀想…」 香澄は、自分のことのように心を痛めているようだ。 「だけどよ、あの爺さんなら買えそうじゃねーか」 「そうですね。その辺りのことを踏み込んで訊いて良いものか…」 「旦那様は、貴方方のような旅の者を施すのに、お金を使ってしまうのです。今までも何度か高麗人参は試してみましたが一向に回復しません」 「何か良い方法が有れば良いのにね」 皆でそう言いながら、部屋の前を通り過ぎ、香澄と俺達野郎3人は、それぞれ別の部屋で着替えを済ませた。 と、部屋を出たところで丁稚に木刀を渡される。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加