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「これは?」
俺は丁稚に訊く。
「旦那様が、これを貴方に渡すように、と。剣術指南出来る者が泊まっているから、後で紹介すると言ってました」
何で勝手に…とは思ったが、この時代に来て当初、侍達に囲まれた事を思えば、木刀位、使いこなせるようになっていた方が良いだろう。
見ると、俺が侍風情の格好をしているのに対して、山村は町民風、鈴木は、町医者風の格好になっていた。
何か、それぞれ違うってーのが、謎だ。
香澄はどんな格好だろうな。
俺は隣の部屋で着替えている香澄に興味が湧いた。
着替えを覗きたくなるのをぐっと、理性を総動員して我慢する。
と、よりにもよって、山村が隣の部屋を開けようとするじゃねーか。
俺は思わず山村の首根っこを掴んだ。
「おい。何、香澄の着替えを覗こうとしてやがる」
「ち、違うよう!香澄ちゃんは、どんな格好かなって思って!」
「同じ事だ」
「千夜くん!首根っこは離してあげて下さい!…山村先輩。諸橋さんの姿は、部屋から出て来た時に解りますからね?」
「はあーい」
3人で通路で待つ事しばし。
香澄が着替えていた部屋の襖が開いた。
と…。
「お待たせ。…って、変かしら?」
俺達3人、一瞬、言葉を失った。
香澄の格好は、まるで空から舞い降りた天女のようだった。
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