11人が本棚に入れています
本棚に追加
「綺麗だな…香澄」
俺は思ったままを言った。
香澄の恥じらう姿は、まさしく天女だ。
山村もポカーンと口を開けて、見惚れている。
鈴木が顔を赤らめながら、ゴホンと1つ咳をした。
「そ、それでは全員揃ったところで、先程の老人の部屋に案内してもらいましょう」
「は、はい。こちらです」
丁稚が廊下を歩いて行く。
俺達4人も、それに続いた。
「旦那様。お客人の着替えが終わりました」
「入ってきなさい」
中から爺さんの声がして、丁稚が座ったまま、襖を開ける。
中は意外にも必要最低限のものしか置いていなかった。
丁稚が襖を閉め、廊下を去っていく気配がする。
俺達はローテーブルを挟んで、爺さんの対面に座った。
「そなたたち、この時代の者ではないな?」
爺さんのド直球な質問に、俺達全員、図星で固まる。
やがて、鈴木が切り出した。
「僕達は書物を扱うお店に居ました。ですが、その内の一冊が床に開いて落ちた途端、この時代に飛ばされてしまったのです」
鈴木は、そこまで言うと、抱えていた本の束を「僕達の時代の書物です」と言って、爺さんに差し出した。
爺さんは本を一冊一冊、眺めていたが、やがて言った。
「書体が我々の時代と違うな。眼鏡よ、翻訳してくれないか?我々の時代の字をそなたに教えよう」
最初のコメントを投稿しよう!