第2話 隣国の舞踏会

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第2話 隣国の舞踏会

 昨日の朝食の時間、突然父から隣国に行くように言われた私は、パンを口に運ぼうとしていた手を下ろした。 「私がミア王国に?」 「そうだ。ミア王国で舞踏会が行われるんだ。ロザリー。お前はもう二十二歳になるのだろう? 社会勉強だと思って行ってきなさい。私からあちらの国王にはすでに連絡済みだから安心しなさい」  父はそう言ってガハハと大きな声で笑うと、ご機嫌な様子で紅茶を口にした。 「でもお父様。私、ダンスの相手がいないのよ。舞踏会に行っても意味がないわ」  私がそう言うと、父は得意そうな笑顔で私を見た。 「第二王子のジュール王子にエスコート役をお願いしてある。お前は何も心配しなくていいよ」 「え? そうなの?」  (第二王子? 確か、クールなイケメンって噂の? 大丈夫なのかしら……)  初めての舞踏会のダンスの相手が隣国の王子様……。 何か引っかかるものを感じながら、私は強制的に身支度をされミア王国へ出発したのだった。 ***  舞踏会の会場には、近隣からたくさんの人々が訪れていた。 一緒にここまで同行してくれたメイドのクララが、会場に入る前にもう一度私の身なりを整えてくれた。 「完璧です、ロザリー様。私は馬車で待機しておりますのでごゆっくりと舞踏会を堪能してくださいませ」 「ええ、一緒に来てくれないの? 不安なんだけど……」 「心配ご無用ですよ。会場の入り口にミア王国で働いている私の知り合いのメイドが立っておりますので。彼女がロザリー様を中に案内してくれます」  クララはそう言うと、会場の入り口に立っているメイドに軽く手を振った。 すると、そのメイドも軽く手を振りかえしてきた。 どうやら、二人は友人らしい。 クララの友人なら安心して頼れるだろう。 「わかったわ。行ってくるわね」 「行ってらっしゃいませ」  深々とお辞儀をするクララを横目に、私は意を決して舞踏会の会場に足を踏み入れた。  ミア王国のメイドのリナに案内されて私が舞踏会の会場の中を進んでいくと、人だかり、それも令嬢ばかりが集まっている一角があった。  (なんなのかしら、この集まりは)  私が少し圧倒されてその場に立ち止まると、それに気づいたリナが申し訳なさそうに頭を下げた。 「ロザリー様。少しお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」 「うん、いいわよ」  リナは私にもう一度頭を下げると、その一角の中に消えていった。 すると、今までそこに集まっていた令嬢たちがさっとそこから一人また一人と離れていく。 そして最後の一人がその場を離れると、そこにいたのは上品で落ち着いた宮廷服に身を包んだ男性だった。
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