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第4話 目覚めと黒猫
ピピッ ピピピ……
鳥のさえずる声が聞こえる。
薄らと目を開けると、カーテン越しに朝の光が差し込んでいるのが見えた。
(まだ眠いわ。ふわぁ……って、頭痛い! えっ、タンコブが出来てる?)
欠伸をしたと同時に頭に痛みを感じ、恐る恐る痛い場所を触ってみると、そこには大きなタンコブが出来ていた。
(あ、思い出した……。そういえば、ミア王国から帰る途中で階段から落ちたんだわ……)
その時の記憶が蘇り、私は思わず身震いをした。
そして、その時自分を助けようとしてくれた人のことも思い出した。
(あの時、ミア王国のメイドが『ジュール王子』って叫んでたのよね。もしかして、私を助けてくれたのってジュール王子だったのかな?)
ダンスを踊る時に見た、ジュールの冷ややかな横顔が脳裏に浮かび、私は表情を曇らせた。
(まさかね。あんな冷たい人が私を助けるわけがないわ)
私はタンコブをさすりながら、もう起きようとベッドから身体を起こそうとしてあることに気づいた。
(えっ、ここどこ……私の部屋じゃない……)
いつもの自分の部屋とは違い、ここは実に殺風景で寝具や家具もシックな色で統一されている。
私が好きなピンクや白などの色が全く見られない。
(どういうこと? あ、そうだ、クッキーは? いつも一緒に寝てるのに……)
いつも一緒にいる愛犬のクッキー。
どこに行ったのだろうと部屋をぐるっと眺めていると、ベッドの上に黒いものが落ちてきた。
(きゃ! な、何?)
「ニャ〜」
(黒猫!?)
大きなクローゼットの上にいたのか、一匹の黒猫がベッドの上に飛び降りてきたのだった。
黒猫は、鈴が付いた可愛らしいリボンをしている。
猫も好きな私は、その黒猫を撫でようと黒猫の背中に手を伸ばした。
「シャーーー」
すると、その黒猫は私に向かって威嚇をしたので私はすぐに自分の手を引っ込めた。
(ええ! なんで威嚇するの?)
トントン
その時、部屋のドアがノックされて若いメイドが部屋に入ってきた。
「失礼いたします……あ、ジュール様! お目覚めになられたのですね! 良かったです」
メイドは、私が目覚めたのを知ってとてもほっとしたような顔をしている。
(ん? ちょっと待って……。今、『ジュール様』って言ったよね? どういうこと? それに、このメイド誰? 新人かな)
私は、何が何だかわからずにそのメイドに尋ねた。
「あの……。私、ジュール様ではないんだけど?」
(!?!? 私の声じゃない!!!)
自分の声ではない声を自分が発している。
一体これはどういうことなの?
動揺して心臓がドキドキと音を立てる。
メイドはそんな私を笑いながら、「またそんなご冗談を〜」と言った後、私の異様な雰囲気を察したのか急に顔色を変えた。
「ジュール様! まさか、記憶喪失なのですか? どうしましょう! 人を呼んで参ります、少しお待ちください!」
メイドはお辞儀をすると、慌てて部屋を出ていく。
私はそのメイドの姿を見て、ますます不安になるのだった。
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