第1話 最悪な出会い

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第1話 最悪な出会い

「やっと終わった……」  先程までの華麗できらきらとした舞踏会の会場から抜け出した私は、手を組んでうーんと大きく背伸びをした。  私は、ロザリー・エシャンジェ 二十二歳。 シヤン王国の第三王女だ。 社会勉強だと、父である国王から隣国のミア王国に送り出されてから数時間。 慣れない窮屈なドレスや化粧。 国の富を存分にアピールするように私に身につけられた宝石の数々……。 「結局これ、お見合いみたいなものだったのよね。だんだんムカついてきた!」  舞踏会で私をリードして踊ってくれたのは、隣国ミア王国のジュール王子だった。 ジュール・ブランシャール 二十四歳。 ミア王国の第二王子。 噂通りのクールなイケメンで、ダンスのリードも完璧、全く非の打ち所がない人。 スマートなその振る舞いに、周りにいた令嬢たちの目を釘付けにしていたのを私は見逃さなかった。 そして、私を恨めしそうに見つめるいくつもの顔も……。 「あー、もう! 何で私があんなに睨まれなきゃいけないの? やだやだ! 早く帰ろ!!!」  あんな外面だけそつなくこなして内面は冷たそうな人、こちらから願い下げだわ! あの人、踊っている間一度も私の顔を見なかったし……。 迷惑だったかもしれないけど、私もそうだから! 舞踏会の会場を見ながら、私は心の中でベーッっと舌を出した。 早く帰って、愛犬のゴールデン・レトリバーのクッキーに抱きついて癒されたい。 「今帰るからね〜クッキー! 待っててね」  愛犬の顔を思い出しながら、私が舞踏会の会場のすぐそばの大階段を一歩前に踏み出そうとしたその時。 「へ? わ、わわわ!!!」  ドレスの裾を踏んでしまった私は、前につまづいてしまった。  (落ちる〜〜〜!)  悲惨な未来を予感しながら恐怖で目を閉じると、私の隣に何かが飛び込んできた。 「危ない!!!」  その声の主の男性は、私の身体に手を伸ばし捕まえたが一歩及ばす、男性は私を抱きかかえたまま大階段を転がっていく。  (いやああああああ)  声も出せず、誰かわからない男性に抱き抱えられながら階段を転がり落ちる。 その間、スローモーションになって男性の顔を見るとそこには私の理想の王子様が……。 んなわけがない。 現実はあまりにも厳しく、私とその男性は無惨にも大階段の真下までものすごいスピードで転がり、そして止まった。 「きゃああああ! ジュール様〜〜〜!」  この声はミア王国のメイドだろうか。 私と男性が階段から落ちたのを見て、かなり動揺しているようだ。 倒れている私の隣で同じような格好で倒れている男性は……? 朦朧とした意識の中で私が見つめたその先。  (あれ……おかしいな……隣の人……私と同じ服着てる……なんで……)  ふと浮かんだ疑問も束の間、私の記憶はそこで途絶えた。
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