康介side

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康介side

真奈美は気でも狂ったのではないか。 彼女の必死の形相に、ただ驚くばかりだった。 正気を失っているような真奈美の発言。 康介はどうやって説得すればいいのか考えていた。 「最初会った時は、ご主人との関係に悩んでいたね?」 「ええ。康介は優しく話を聞いてくれたわ」 「真奈美は悩んでた。俺は、学生時代真奈美に憧れていた。だから頼られるのは嬉しかったし、友人として、君の力になりたいと思った」 「康介さんは私に親切だったわ」 「そうだ。あくまでも友人としてだった。俺には妻がいるし、真奈美はご主人も子供もいた」 彼女はゆっくりと頷いた。 「俺は、ほんの軽い気持ちで君を抱いた。一度だけでいいからと真奈美が願ったからだ。だけど、断ることもできたのにしなかったのは俺の責任だ。だからといって本気で君を好きになった訳ではないし、ただの遊び感覚だった。真剣に妻と別れようとは思っていなかった。真奈美と一緒になりたいとも思っていなかった。その場の雰囲気に流された」 「私だって、あの時はこの関係が長く続くとは思ってなかった。ただ、寂しい気持ちを埋めてくれる存在になって欲しかっただけ。けどね、本気で夫より康介さんを愛してしまったの。何度も会って抱かれるたびに、夢中になっていったわ」 「止めなかった俺にも責任はある。けれど、もう終わった。この関係はただの浮気で、本気ではない」 「あなたは、奥さんとはセックスレスだと言った。なのにずっと私の事は抱いてくれたでしょう?私が奥さんよりも愛されていると思うのは当たり前だわ。今更、妻が大事だと言われても信じられない。康介さんは今、奥さんを抱いているの?彼女は浮気をしているでしょう。あの人、前島とかいう男の人とはそういう関係だわ」 「だから何だ?彼女が外で何をしようが、俺に文句を言う筋合いはない。俺への当てつけだ。雪乃は俺を愛しているから、わざと仕返ししているんだ。心は俺から離れていないと信じている」 「そういうのを独りよがりというのよ。雪乃さんの気持ちはとっくの昔に康介から離れているわ。彼女は私に言った。離婚しようと言っているのに別れてくれないって」 「そうだよ。彼女は離婚を望んでいる。俺は彼女を手放せない。言っている意味が分かるか?浮気しようが何をしようが、俺は彼女を手放すつもりはない。それくらい妻を愛しているんだ」 「だから私とは別れるの?私の家族は崩壊したのに?誰のせいなの?あなたのせいよ」 「なんと言われようが、俺は雪乃と別れない。だから君とは終わりだ」
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