ヨウちゃんの声

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 あれから何年経っただろう。ヨウちゃんはまだ帰ってこない。でも、私はずっと門の前でヨウちゃんを待っている。ヨウちゃんの『ただいま』を聞くために。 「早く帰ってこないかなあ」  箒を持って空を見上げる。いいお掃除日和だ。 「さあ、お掃除しなくちゃ」  箒で家の前を掃こうとしたときに、箒の先が誰かの足にぶつかった。慌てて顔を上げる。 「あ、すみません! って、え?」  見慣れた顔、でもあの頃よりもずっとずっと大人っぽくなった顔が笑っていた。 「ただいま」 「……おかえりなさい!」  ヨウちゃんを抱きしめる。ヨウちゃんは抱きしめ返してくれた。  ヨウちゃんの声はまるで布団みたいな安心感がある。  小さい頃からずいぶん変わってしまった声。  だけど、いつも私を包み込んでくれた優しい声。  だから私も、あなたを包んであげられるようになりたい。
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