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1話.私達の日常/悪魔の剣・シャムシール・エ・ゾモロドネガル
ルメリアは決して、好きでキスしているわけじゃない。
あくまで、キスすることで主人が最強兵器を召喚できるからだ。
そう自分に言い聞かせるルメリアは、必死にこのキスが本意ではないことを強調する。
だが、そんな抵抗も虚しく、ついにゼノが苛立ちを露わにして恐怖の圧をかけてきた。
ルメリアは彼に、恐怖の大魔王と名付けたい。
「言い訳はいいから早く口を開けろ、この馬鹿。」
「う……っ!」
ドSな口調のゼノの逞しい手がルメリアの顎に伸び、次の瞬間には唇を奪われる。
ひんやりと冷たいゼノの手が肌に触れ、淡い水色の瞳がルメリアを冷淡に見下ろした。
相変わらず彼が吐く息は冷たい。
それなのに、なぜかキスする唇だけは燃えるように熱かった。
「ん……っ……!」
ルメリアは彼の胸を叩いてわずかに抵抗するけれど、すぐに身体中から力が抜けてしまう。
それを見たゼノは少し微笑し、ますます体を密着させる。
くちゅっという、キスの生々しい水音がルメリアの耳元まで届く。
目を閉じても、脳裏に生々しい感触が伝わってくる。
まるで全身が唇になったかのような感覚。
すべての神経がそこに注がれる。
「うっ……ん……!」
角度を変え、ゼノは執拗にキスを繰り返した。
ルメリアが何とか拒絶し、口を閉じようとすれば、ゼノの指が強引にこじ開けてくる。
「暴れるな、ルメリア。本当は気持ちいいくせに。」
「っ〜〜〜!」
そう、本当は嫌なはずなのに。
ゼノにキスされる度に、ルメリアはとろとろに溶かされてしまう。
だがこれは、あくまで緊急措置。
二人の間に恋愛感情など存在しない。
キスはただお互いの身を守るための手段にすぎないし、それに………
「死ね、ブラド伯爵━━━━━━━━!」
いつだって甘い空気は、敵の襲来で一瞬でぶち壊される。
なぜなら二人には敵が多すぎるから。
こんなに危機的状況でも、ルメリアはあくまでキスは仕方なく!という思いだけは頑なに譲らなかった。

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