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不意に周りが明るくなった。
モンシロチョウの複眼と目が合った刹那、俺は思わず目を閉じていた。
しかしその僅かな時間に、トンネルを抜けて光が差し込む様子を知覚していた。
緑が広がっていた。
木の幹にまとわりつく緑葉の群れ。
俺はどうやら、どうしたことか森のような場所に横たわっているようだった。
手のひらに触れる腐葉土は、生暖かく心地よい。しかし、植物や石が分解されたり風化してできた凹凸と、それを覆う粘度が少々ある湿り気のようなものが気持ち悪くもある。
なぜか身体が気怠くて、身体も頭も動かさずに俺は自らに湧き上がった疑問に応対する。
そもそも、季節はこんな春や初夏のようなものでは無かっただろう?
冬に差し掛かった秋だろう。
気づけば車に乗っていたように、モンシロチョウを三人が食べていたように。
これはそうか、明晰夢と言うやつか。
俺はそう思い込もうとするが、どうもしっくりと腑に落ちない。
それならば。
これは、神隠しとでも言うやつだろうか――。
いやまて、三人は、小山は、岸部は、新塚は?
「おい」
呼びかけてみた。
返事は無い。
森には風も吹かず、作り掛けの無響室のような空間に閉じ込められたような不気味さがある。
汗ばんできた。
湿度が高くなったような、ジメジメとした不快感が徐にまとわりついてくる。
おい、ともう一度呼びかけてみた。
すると、ガサ、という音が、横たわる俺の足先の方から聞こえてきた。
はっとして身体を起こそうとした。
動かない。
金縛りのような、見えない無数の手で身体全体を抑えられてるようなそんな力を刹那感じた。
むっ、うぅ……。
そんな情けない声を漏らしながら俺は、必死に起き上がろうとする。
するとそれに合わせて少しこの森にあるべきでない雑音のような音が耳に届く。
はたと動こうとするのをやめてみると、三人の声のトーンで微かに笑っているのが聞こえた。
俺は何故か、途端に腹が立ってきた。
こんな状況にしたのはお前らのせい何じゃないのか?
そう思って、血が頭に昇ってがむしゃらに身体を起こそうと筋肉を硬直させた。
そしたらその度に徐々に、三人の笑い声は大きくなってきた。
はは、はは。
ははははは。
けれどその笑い声は単調で、抑揚がない発声はただ横隔膜を上下させるだけでも出てきそうな声で、さっき抱いた怒りとともになにか、膜に包まれたような不安が押し寄せてくる。
ははは。
ははははは。
ははははははは。
鼓膜が歪に震える。
その振動が脳を嫐る
俺は半ば過呼吸になりながら、おい、おい、おい!と繰り返して暴れようともがいていた。
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