ビニールプール

　倉庫を片づけていたらビニールプールが出てきた。
　こんな物が家にあっただろうか。勝った覚えはさすがにないから、貰い物を適当に倉庫に入れていたかな。
　さすがに今年はもうシーズンオフだが、来年、子供達が遊びたがるかもしれない。
　そう思い、破れがないか確かめるため、膨らませて水を張ってみた。
　どうやら大丈夫らしく、水漏れはまったくしない。
　それだけ確認できれば十分だ。後はこの水を使って洗車しよう。
　そんなことを考えながらプールを覗き込んだら、プールの底に何かが見えた。
　水が揺らめいて見辛いので水面に顔を近づける。その瞬間、プールの中から二本の手が飛び出し、俺の肩を掴もうとした。
　寸での所で後ろに飛びのき、伸びた両手から逃げた俺は、すぐさまプールの水を抜いた。
　大きなビニール袋にプールを入れ、しっかりと口を閉じる。
　さっきのあれが何だったのかは判らないし、もう一度水を張って確かめる気もない。
　幸にも、明日は不燃ごみの日なので処分。今俺が考えているのはそれだけだ。

ビニールプール…完