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「悠翔、あたし……遥翔に連絡を……」
隣に置いておったスマホを手に取る。
「もう連絡はとれないんだよ、紅音」
「そんなわけない!遥翔があたしを置いてどこかに行くはずない!遥翔はあたしのそばにずっといてくれるってそう約束したんだもん」
スマホを手に取りながら、あたしの脳裏には誕生日に指切りした約束が浮かぶ。
『俺は絶対紅音を手放さないし、何があってもそばにいるから。俺を信じてこれからもついてきて』と遥翔は言っていた。
メッセージアプリを立ち上げて、遥翔とのスレッドを出すと「ごめんね」と入力途中だった文字が見える。
遥翔が「帰ってきたらまた話そ」って言って出てってすぐにこの文は入力していたけど、送るか迷って。何度も送ろうとしてやめていた言葉だった。
だから、あたしはその文をちゃんと送信する。
いつもすぐ既読なるそのメッセージはいつまでも既読にはならない。
「遥翔は明日帰ってくるって……言ってた」
「紅音、頼むから現実を見てくれよ。もう帰ってこないんだよ」
遥翔があたしへ言うけどその表情からは苦しみが溢れていた。
「嫌だよ、そんなの信じたくないよ」
何も信じられない。受け入れたくない。
あたしの頭の中は混乱していた。
いつだって思い出の中の遥翔は笑っていて、無邪気で元気だった。優しさなんて持ち合わせてないけど、それでも根は優しい人だって知ってた。
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