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第0章 色は鈍色に…
西暦1179年09月02日。
平維盛「父上が死んだなどと笑えない冗談を仰せにならないで下さい!」
平清盛の嫡男である平重盛の屋敷がある小松邸では平維盛が発した魂からの叫びが響き渡っておりました。
藤原経子「そんなの冗談ならばその方が良いに決まっているではありませんか!殿は…誰よりも正義を貫きその為ならば総帥にすら意見する事も躊躇わない立派な方でした。」
藤原経子は自身が産んだ子ではないものの維盛と資盛の事を我が子と同じくらい可愛がっておりました。
資盛「異母兄上、養母殿を責める事だけはお辞め下さい。我ら小松家は…平家一門から疎外されようとしているのですよ?宗盛叔父御が跡継ぎになられたらそれこそ確定です」
平資盛…維盛とは母を違えていたものの経子の養子として同じくらい愛情を受けて育った重盛の次男である。
小松家…平家一門から疎外されようとしていた重盛の家族を邸が構えられていた地名から取り小松家と呼ぶ場合がありました。
経子の目に映る世界はこの日から色を喪い鈍色となってしまいました。
藤原経子「跡を継ぐべきは維盛殿ではないのかしら?私は殿の妻として維盛殿を次の総帥に推挙したいのだけれど…」
藤原経子から想いを聞いた維盛は、
驚きを隠せずに…
維盛「…えっ?
そんな…あり得ませぬ…まさか!」
どこから出しているのか分からなくなるくらいの裏声を出しながら慌てふためいておりました。
資盛「兄上…
どこから声を出しているのですか?」
資盛は冷静沈着な声で驚く異母兄をただ見つめていました。
維盛「私が2代目の総帥になるなんて…そんな奇跡あり得るのか?」
維盛は期待に胸を躍らせては
おりましたが清経だけは…
何故か浮かない顔をしておりました。
清経「異母兄上達は…少しの危険性しかないのに…何を考えておられるのですか?私の母と妻は総帥が憎んでも憎み足りないくらい憎い藤原成経の娘と妹ですよ。」
清経の異母兄である維盛もそれに関しての危険性ならば…少しではなく…それなりにありました。
維盛「すっかり忘れていたではないか?小夜は藤原成経の娘だったではないか?」
それを聞いた瞬間、
資盛と経子は困惑してしまいました。
資盛「忘れていたのですか?」
経子「気の毒な限りですね、小夜が」
2人から鋭い突っ込みをされた維盛は困った顔をしていました。
そんな深い絆を持ち合わせていたのが小松家でございましたが…運命の歯車は少しずつ軋んだ音を出しながら狂っていったのでございました。
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