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中学生か高校生になる頃には、私より両親の方が早く帰っていることもあった。それが、どのくらいの頻度だったかなんて覚えていない。
高校を卒業すると、あの家に帰ることはなくなった。
「ただいま」を言うか言わないの話ではなく、帰らなくなってしまった。
きっかけは、初デートをした日のことだった。
私は、少し帰りが遅くなってしまった。その理由は、別に親に言えないことではなかった。
なかなか電車が来なくて帰りが遅くなってしまった。ただ、電車が遅延や運休をしていたという記憶もない。たしか、最後に「また、明日学校で」と一言いうために、乗る予定だった電車を見送ったことが原因だった。そんな気がする。そしたら、思いの外次の電車までの間隔が開いていて遅くなってしまった。
すっかり、日も落ちて暗くなった夜道を一人で歩いていた。
家に着くと、明かりがついていることを確認してチャイムを鳴らした。
今思えば、チャイムなんて鳴らさないでこっそり家に入るべきだったんだと思う。そうすればくだらないことで言い争うこともなかったのだから。
私は、母は開口一番に「遅かったじゃない」と言った。黙って家に上がると、「せめて”ただいま”くらい言いなさい」と付け加えられた。
私は、それに「自分も言ってないくせに」と心の中で悪態をついたつもりだった。
しかし、母には伝わってしまった。母は、「今はあなたの話をしてるのよ」と言っていた。
おそらく、単に口か顔に出てしまっていたのだと思う。それでも、なんだか母は、私の心を読み取る能力でも持っているのように思えた。だから、許せなくて、思っていたことをそのまま言い返してしまった。
結局、それは喧嘩にまで発展した。
そして、その喧嘩が原因でさらに距離が出来てしまった。
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