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そういうと、彼はじっとこちらを見つめる彼女に背を向け歩き始めると、上総と呼ばれた男もそのあとに続く。彼女はその後ろ姿をじっと見つめていた。
その視線を感じつつ、男は小さく口を開く。
「……上総、彼女を調べろ」
「畏まりました」
そう答えると、上総は傍に居た警護の一人に指示を出し目の前に止まる車のドアを開け主人を乗せた。
走り出す車はひどい騒音と排気ガスをまき散らす。その煙に少女はむせて咳き込むが、そんなことはお構いなしに車は走り去っていった。
「……絶対、那津くんだと思ったのに」
少女のひとり言は、巻き上がる砂煙に消されてしまった。
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