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天使族なのに前世と同じ漆黒の髪に緋色の瞳は、どちらかというと小悪魔的な見た目だと思う。ルーファの髪と瞳が羨ましいわ。
天使族は守護と加護を与える一族で、金髪碧眼か青い瞳を持ち、肩から腰に掛けて対になる羽根を生やす。私は腰に小さな白い羽根があるのでれっきとした天使族だ。それでも私の容姿を馬鹿にする人たちは多い。
「じゃあコンハクカイショウしたら、セレナは僕のお嫁さんになってくれる?」
「まあ!」
目を潤ませて泣きはらした幼馴染にキュンとしてしまい、ギュッと抱きしめる。なんて可愛い子なのだろう。好き。
「私の婚約解消時に、ルーファの好きな人が変わってなければ……いいよ」
「セレナ!」
ボロボロと泣いていた青色の瞳が一瞬だけ、赤丹色に変わった──ように見えた。その後すぐにルシュファは私の腹部に引っ付いてしまったので、気のせいかもしれない。
「変わらない。変わるわけがない・・・・・・。僕が好きなのは、セレナだけだもの」
「ルーファ」
轟々と降り続いていた雨は止み、厚い雲から陽射しが零れ落ちた直後に見た七色の虹は、とても美しかった。
私とルシュファの約束。
「私もルーファが大好き」
「ほんとう?」
「本当よ」
「僕もセレナが好き、大好き、愛している」
可愛くて思わず頬にキスをしたら、ルーファも同じようにキスを返してくれた。
これから会うことは減ってしまうけれど、婚約解消するまで待っていてくれる。そう子供ながらに私は信じた。
ルーファに好かれているという自信もあったから。
でも、その約束は叶わなかった。
私が王宮で暮らすようになってから数年後、ルーファはすぐに軍に入隊したか。そして私が十一歳になった頃、ルーファは公爵令嬢のベアトリス様と婚約したと風の噂で聞こえてきた。
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