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何でも公爵令嬢のお相手が事故で亡くなったため、新たな婚約者を探していたとか。王妃候補の声も上がったらしいが、ベアトリス様は早々にルーファと婚約してしまった。
少なからずショックで、淑女らしい笑みが保てなかった。
「……約束に縋っていたのは、私のほうだったのね」
王宮に入ってから、両親との面会も手紙もない。それはルーファも同じ。五年も音信不通なら、自然消滅してもしょうがないのに……。
豪華絢爛な装飾に彩られた王宮では白と黄金をふんだんに使って、芸術的な内装に溜息が漏れるだろう。けれど私にとっては堅牢な鳥籠にしか思えない。
厳しい王妃教育に何度も心が折れそうになった。それを支えていた柱がまた一つ、音を立てて崩れていく。
王宮で暮らして王妃になりたい気持ちが芽生えたことは一度もなかった。王太子──エドガルド様は今も国中を回って番探しに奔走している。
国王と王妃は、どこまでも王太子には甘い。
婚約解消まで後、五年。
この日付も条件にしている。ただ婚約解消しても、幼馴染は迎えに来ることはない。
悲しくなかったらと言ったら嘘だけれど、これ以上ルーファ……ううん、ルシュファの気持ちを縛っておくより、好きな人と幸せになってほしいわ。
五年後、婚約したら私は王妃候補筆頭から、何になっているのかしら?
番が見つかり婚約解消した後、私は王宮には残らない。側室あるいは何らかの形で関わることを禁じることを条件に、婚約を受け入れたのだ。
王都を離れて、……領地に戻ることは両親も望んでいないだろうし、どこか見知らぬ土地でのんびり暮らすのもいいかも。それとも国を出て旅行をするのも悪くないし……。このファンタスティックな異世界で、自由に生きてみたいわ。
腰から生えた真っ白な一対二翼を微かに広げて、空を見上げた。その日、どんよりとした空に虹が架かることはなかった。
その五年後、エドガルド様の番が見つかったのだが、それをキッカケに世界情勢がひっくり返るようなことが起こる。
あの可愛くて、泣き虫で、優しい彼が魔王になって戻ってくるなんて、誰が想像できただろうか!!
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