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うわっ、言い切った。嘘を貫けると本気で思っているようだ。確かに契約そのものは履行されて燃え尽きたが、その内容証明は神殿にある。神殿もグルだった場合、多少面倒だが各両家にも控えがあるので正すことはできなくはない。もっとも実家が抑えられたら、勝ち目は途端に薄いが……。あれ、もしかしなくても詰んだ!?
「君が王妃教育を受け続けてきた能力が役に立つのだ。光栄なことだろう。それに君が望むのなら、側室にしてやっても──」
ヒュン、と空を切った音がした直後、近衛兵が飛び出す前にエドガルド様のケープに漆黒の槍が突き刺さり、その勢いに引っ張られて壁まで激突。
凄まじい音を立てて、壁に巨大なクレータができあがった。
「きゅう」
「きゃああ! エドガルド様ぁあ!」
「エドガルドちゃん!?」
「近衛兵は何を──」
今の槍ってどこから!? 襲撃!?
周囲を見渡すが、それらしい人物は見当たらない。
「無限の黒槍」
漆黒の槍がパーティー会場全員の影に突き刺さった。
バチンッ、という音と共に衝撃が走る。法王と皇帝は独自の魔法陣あるいは術式を展開して、漆黒の槍を回避していた。
国王と王妃のところにも王宮魔導士の展開した結界で弾こうとしたが、アッサリと貫通して影に突き刺さる。
国王と王妃たちだけ槍の強度が違う!? それとも王宮魔導士の質の問題?
ガシャン!!
頭上のガラス窓を突き抜けて漆黒の全身甲冑姿の騎士がパーティー会場に乱入する。床に着地する際、重力を無視するようにフワリと降り立った。
ガラスの破片は私の加護で当たらなかったからよかったけれど、普通なら大怪我だったわ!
「……」
「──っ!?」
背丈は百八十センチ前後とかなり長身かつ細身の甲冑だが、溢れ出る殺意に全身が凍り付いた。しかし黒衣の騎士目が合った途端、殺意が霧散する。
え、なんで?
「あ……。君に敵意を向けるつもりはなかったんだ。ごめん」
「……い、いえ」
漆黒の全身甲冑に身を包んだ彼は、私の目の前で申し訳なさそうに謝った。あれ? なんか落ち込んでいる??
途端に大きな犬は落ち込んでいるように思えてきた。なんか懐かしい。
ん? 懐かしい??
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