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何だかんだと面倒見のいいアルベルトはその後、シルヴィアが土地購入するまで、的確なアドバイスをくれた。もはや面倒見のいい親戚のおじさんぐらいの距離感である。
シルヴィアは前世も含めて、今まで何かと独りで決断して行動することが多かったので、こういった親身なアドバイスが嬉しかった。
(記憶がなくとも、そういうところは変わらないのね)
ステータス画面のポップアップに、空間の購入済のマークが浮かび上がる。これで洋館に入ることができそうだ。
元々、気を失っているドラゴンの所有物だが、シルヴィアは勝利権限を使って、拠点となる洋館を購入した。
金銭を払っているので、強奪までは行かないが弱肉強食の世界なのだからしょうがない、と罪悪感などすぐさま頭の外に追いやってしまう。
(口調と態度はとても聖職者に見えないけれど、意外と律儀だなぁ。相談できる年長者がいるというのは、中々に頼りになる。でも全幅の信頼を置くことはできなさそう。この手の人は懐いていると分かった途端、興味をなくすか、後ろからズバッと刺して雑に関係を終わらせそうな気がするし…)
何より人外には気をつけるようにと、昔ラフェドに言われ続けてきたのだ。人間に近しい姿をしているが彼らと人間では、根本的に価値基準が異なる。
魔人は人間の生み出す感情を糧に生きているのだ。長寿であり人間の感情から派生した存在は、前世──時折芽衣李の世界では、人間を誘惑する悪魔のようなものである。
人間の様々な感情を好み、それを求める余り破滅に追いやる。その享楽を求めて気まぐれで、一国を滅ぼすような快楽主義者も多いと聞く。
それ故、人間に擬態している人外が親しげであっても、注視して簡単に信用してはいけない。親しい隣人になって、人間を破滅に追い込む。そうでない魔人もいるらしいが、それでも本来の資質に引っ張られてしまうらしい。
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